毎日が、変わっていく想いで溢れてた。

episode:12 目覚める心・眠る想い

「コトブキ・・・どうして、あんなことしたの?」
帰り道を、セイは久々にコトブキと二人きりで歩いていた。彼女はコトブキの初めての抵抗に疑問を持たず
にはいられなかった。
「申し訳ありませんでした」
コトブキは当然のように謝るだけで、他には何も言わなかった。
「・・・いいんだよ。あなたの意思なら、私は嬉しい」
セイは笑った。
「暴力・・・はよくない。だけど、ケンカって大事じゃない?男同士で、今しかできないことだわ。そうや
って深まる友情だってあるわけだし。でも・・・今回のような、騒ぎはもういやだわ・・・」
セイは表情を曇らせる。コトブキはただ前を見つめ隣を歩いた。
「あの言葉が・・・私のためなら嬉しいわ。ありがとう」
セイはコトブキの台詞を思い出し、彼を見つめお礼を言った。コトブキの顔はみるみる赤くなり、セイはオ
ーバーヒートかと慌てた。
「これから・・・大変ね。あの問題が・・・ロボットと人間・・・わかりあえないわけじゃない。でも、も
うあんなのはいや。ただの暴力。・・・またあの人は平気な顔して殴るんだわ」
セイはシゲのことを思い浮かべた。あの人の手も赤く腫れていた、大丈夫だろうか、ちゃんと手当てをした
だろうか。気にすればするほど、心配事がでてきてとまらなかった。
「ご主人様・・・」
コトブキは心配そうにその表情を覗き込んだ。
「やだ・・・やめましょう、それ・・・」
「?」
「ご主人様だなんて、だめね、私ったら。よく考えたらそれも原因だったかも・・・。ごめんなさい。学校
では只のクラスメイトなのに・・・」
「いいえ、ご主人様・・・!」
コトブキは慌てて、暗くなるセイを止めようとする。

「セイよ」
「・・・」
「セイって、呼んで」
「でも・・・」
「セイ!」
彼女はぱっと笑顔をつくり要求する。
「・・・セイ」
「うん」
にっこりと微笑む彼女と対照的に、コトブキは申し訳なさそうに顔を背けた。
「敬語もなし!」
「でも・・・!」
「なしったらなし!いいわね!?」
「はい・・・」
「よし!」
穏やかな空気が二人の間に流れる。しかし突然セイの表情が変わった。大人びた微笑から、少女のような顔
に。
「コトブキ、ごめん、先に帰って!」
セイは駆け出す。なにか大切なものを見つけたような逸る表情と共に。

「・・・シゲ・・・・」
コトブキはセイの走る後姿と、その先にあるものを見つめ呟いた。


BACK